MDプレイヤー、最後の遠吠え

MZ-RH1 S Hi-MD ウォークマンiPodに代表されるデジタルメディアプレイヤーが市場を席巻する中、ソニー製の面白いポータブルMDプレイヤーが久々の大ヒット商品になっている。

その名は「MZ-RH1 Hi-MD ウォークマン」。

通常の3倍以上の売れ行きで生産が追いつかないという、斜陽メディアのミニディスク製品にはほぼ有り得ないセールス。ソニーの公式サイトではあくまでも「リニアPCM録音」による非圧縮の高音質をトップに掲げてはいるものの、購入者の狙いは間違いなく「過去のMD音源のPCへの吸い出し機能」だろう。自分も今一番欲しいガジェットだ。

どうせ将来的には消えるメディアなんだろうとは思いつつ、代替案もないままに録りためたMD音源は数百枚になる。その多くは「チャートヒットではあるが、CDを手元に置いておくほどの価値はないと判断したもの」、はっきり言えば「売り払う前に一応録音だけはしておいた」レベルの音源。しかしいざ売ってしまうとこれが二度と手に入らなかったりして、どうにもダサい曲なのに愛おしく、知人にCD焼いてあげたくてもできないのは何とももどかしい。

そんなチャートファンの戯言は置いておくにしても、部屋の片隅で突然発見されたMDに意外な曲が録音されてて、「あの頃」のことをつい懐かしく思い出してしまった経験のある人は少なくないはず。渋いニッチ市場をピンポイントで突いてきたソニーの着眼点はやはり素晴らしい。それにしてもMDプレイヤーにUSB端子が付いていることがこんなに新鮮に感じられるなんて…

これまでも、MD音源をPCに取り込むことは可能だったが、ラインアウト端子からアナログで吸い出すしかなかった。そうすると複数曲でも1曲にまとまってしまう(つまり "LOVESEXY" 以外のプリンスも全部1枚1曲になってしまう)ため、後から分割したりと面倒なことが多かった。その辺がすべて解消されているようで、USB端子からPCにつなげば全部完了、曲番号はもちろんのこと、MD側に入力した曲名があればそれも認識してくれるという。PCに取り込んだ後はネット経由で曲名の自動取得も可能。

最大のポイントは、取り込み形式がATRAC3形式だけでなくWAVEファイルもOKということだろう。要するにWAVE→MP3→デジタルオーディオプレイヤーへと、無限にコピーが可能になる。MD to MD のダビングをあれほど制限してきたソニーの歴史を思いきりかなぐり捨てて。

詰まるところ、過去に録音した楽曲はこの機種からPCを経由して最大のライバルiPodに取り込まれていくわけだ。これをソニーがAppleの軍門に下ったひとつの象徴と見ることももちろん可能だが、ソニーファンの一人としては、最後の最後にこういう商品をリリースしてくる彼らの心意気を買いたい。

しかも、スタパ齋藤「週刊スタパトロニクス」での絶賛レビューにもあるとおり、オーディオ製品としての完成度が異常に高いという点もさすがだと思う。この期に及んでこれまでのMDの概念を覆す超高音質製品を開発したということ自体恐らく、転んでもただでは起きないというソニーのしたたかな決意表明なのだろう。ソニーにはiPodの真似っこではなく、こういう「彼らにしかできないこと」を究めてほしい。

MDメディアの見納めとなるのか、はたまた想定外のブレイクスルーのきっかけになるのか。今シーズン、個人的に相当気になっている商品だ。


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